マクドナルドにて

マクドナルドにて。

どこにでもある代わり映えのしないあの硬い椅子に僕は座っている。僕は小説を読んでいた。

隣の男の会話がどうしても耳に入ってきて集中できない。会話に耳を澄ませる。

「スペック」の話をしている。スペック、スペックと何度も言っている。

お前と俺ではスペックが違うもんな。そう。おそらく女とうまくいっていないのだろう。ひどく落ち込んでいる。

今日約束をすっぽかされているみたいだ。そして、もう相手は会う気がないようだ。返事ももう「へ〜」しか言えなくなっている。

電話を切る勇気もない。終わってる事をもう気づいているのに、それを認めたくないがために1秒でも会話を引き伸ばしていたいがための中身のない会話。沈黙も間に挟まる。その沈黙のタイミングもなんだかきていると規則性がある気がしてくる。

他人とは言えども、なんだかこっちも落ち込みそうになる。

「もういいよ。もういいよ。俺が悪かったんでしょ。もうそれでいいよ」

そんな声が聞こえる。言い方が悪かったの?って君は悪くないんだよきっと。そういうやりきれない気持ちを乗り越えて、自分の何かに変えて欲しい。僕もわかるよ。男はバカだから。僕も君もバカだから。

きっと正解なんてなかったんだ。うまくいく方法なんていくらでもあったんだろうけど、それを上手に見つけられるような人間なら君はここで平日の昼間から電話していないさ。

しかも、よく聞くと標準語だし。大阪なのに標準語だし。わざわざきたのにって言ってるし。

今日はもう会わないの?って何回も言ってる。頑張ろうな。男。

彼の携帯の電池があと11%。それで、一つの関係が終わってしまうのだろうか。

一緒にいたい男と、距離を置いて冷めてしまった女。

マクドナルドにて。今日も残酷な日常がそこにある。

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